スポーツクラブ見聞録(1)

この原稿は、女房が参加している体育の勉強グループの機関誌に書いたものです。

スポーツクラブ入会

 「運動施設にお金を払う」という感覚自体が僕にはわからなかった。
 教員をしていた頃は、夏休み中は、色々な部活の合宿を渡り歩き、食事とスポーツに明け暮れていた。バレー、バスケ、ソフト、テニス、卓球etcetc。又、定期テストの時などは教職員のスポーツ大会があったり……。とにかく、僕の周りには「スポーツ」はそこここに転がっていたのだった。
 
 教員を辞めて家にいることが多くなった。
 時には一日中パソコンの前に座っている事もある。ひどいときなど、一歩も外に出ずに、家の中にいることさえある。
 そのくせ、食べることだけは食べる。時間があるから、しょっちゅう休憩をし、その度にタバコと何かを口にするような毎日が続いた。

 久々に会う友人達には、「太ったねぇ〜」と必ず言われた。とにかく僕の身体は膨張をし続けていた。
 「とにかく毎日20分以上歩けば良いの!」
 次々と服やズボンが小さくなって着るものがなくなっていく僕に向かって、その度に女房は、そう口にした。

 「全く不経済なんだから!」と言うことも必ず付け加えてくれた。(^^;;

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 一昨年の冬。
 女房のスキー実習の下見を兼ねたスキーツアーに参加した。ウェア等がきついことは、日頃きている服が、どんどん着られなくなっていくことで、予測はできた。
 また、運動していないからチョット滑るだけで、しんどくなるだろうとは思っていた。しかし、その「チョット」が、あまりにも「チョット」過ぎたのに、愕然とした。
 最終日、初級者用のコースを降りてきたのだが、少し滑ると、足首、ふくろはぎがいうことをきかなくなった。転ぶことはないのだが、泣きそうな気持ちで下まで降りていった。

 去年の12月。息子の持久走大会の前に、一緒に散歩をしよということになった。その時、少し走ったりもしたのだが、これもほんの「チョット」走っただけで息が上がり、音を上げる息子以上に、こちらが音を上げたくなってしまった。

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 ある日、新聞広告に「○○スポーツクラブ一日体験」なるチラシが目に入った。
 「ちょっと行ってこようかなぁ〜」
 「お金なんか使わなくても歩けば良いの!歩けば!」
 そう言う女房の声を無視して、僕は、大枚(笑)\1,000をはたいた。

 機械を使って、ただ一人黙々と汗を流すということに、何とも言えない無機質な感じを受けはしたが、思いっきり汗を流す気持ちよさを久しぶりに僕は味わった。
 帰宅後、対女房交渉の末、僕はスポーツクラブに入ることにした。

99/11/5